コンピュータービジョン分野におけるトップカンファレンス 「ICCV 2023」にて、2本の論文が採択

2023.08.14 技術情報

共同動作や画像検知モデルに関する分野の研究成果を発表

LINE株式会社(以下、LINE)による論文2本が、2023年10月4日から6日にかけて開催される、コンピュータービジョン分野におけるトップカンファレンスのひとつ「ICCV 2023」(フランス、パリ)にて採択されました。「ICCV(International Conference on Computer Vision)」は、IEEE Computer SocietyおよびComputer Vision Foundationが主催するコンピュータービジョン分野におけるトップカンファレンスです。本会議は2年毎に開催されており、LINEは2021年に続いて2回連続の採択となりました。採択された論文はいずれも開催期間中に発表されます。

 ■言語指示によって、役割に応じた2人の共同動作を生成

論文[1]では、ゲームや映画を始めとしたCGキャラクターのアニメーションに用いられるモーションキャプチャーデータを、機械学習により生成するという課題に取り組んでいます。特に、今回の取り組みは2人の人物の共同動作を言語指示によって生成するもので、1人の動きに加えて相互作用なども考慮した複雑なモデリングが必要なため、従来研究では高品質な生成は実現されておらず、また役割を個別に与えることも考えられてきませんでした。本研究では、2人の動きの間の一貫性を保ちながら、動作の主体には能動態、受け手には受動態の言語指示をすることで、2人の共同動作を生成する手法を提案しました。個々の役割を指示できる新規の課題設定や、シンプルながら従来手法を大きく上回る生成品質を達成する提案手法の有用性が評価されました。

 

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図1: それぞれ色に対応した人物に個別に役割を指示し、2人の共同動作を生成

 

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 図2: 生成された2人の共同動作の従来手法との比較
提案手法のみ役割を指示でき、ピンクの人物が動作の主体となるように生成

 

■画像検知モデルの信頼性テストに向けた高品質な敵対的サンプルを生成

論文[2]では、加工画像検知モデルの脆弱性を検証するための敵対的サンプル生成を題材としています。近年、生成AI技術の広がりに伴い、画像編集スキルを持たない人でも簡単にフェイクコンテンツを作成できるようになるなど、新たな脅威が増しています。偽物の画像を見抜くような検知モデルは多く研究されていますが、そうしたモデルは敵対的攻撃に対して脆弱な場合があります。信頼性の高い検知モデルを作るために、敵対的サンプルのようなテストケースを使った耐性や倫理的な検証が必要であるため、高品質な敵対的サンプル生成も重要な課題となります。

本研究では、加工画像検知モデルの脆弱性を検証する敵対的攻撃タスクと敵対的サンプル生成方法を提案しています。従来の敵対的攻撃タスクは、入力画像を誤分類させるのが目的でしたが、提案タスクは特定の加工領域を隠蔽するようなより高度な攻撃を行います。また、従来の敵対的サンプル生成方法は、画像空間にノイズを加えるため画質が劣化してしまう場合がありました。これに対し本研究では、空間特徴と周波数特徴の両方をGANアーキテクチャに組み込む新しい生成方法を提案することで、より詳細な画像情報を保持することを可能としました。実験による評価では、本研究で生成したサンプルが他の手法より高い攻撃成功率を達成し、高画質・自然な画像の生成を実現しました。

 

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図3: 実験による評価。提案手法と既存手法とで生成した敵対的サンプルと攻撃結果を比較
提案手法がより高画質・自然な画像の生成を実現しており、攻撃成功率も優れていることを示す

 

採択された論文

1.Role-aware Interaction Generation from Textual Description
Mikihiro Tanaka and Kent Fujiwara

2.Frequency-aware GAN for Adversarial Manipulation Generation
Peifei Zhu, Genki Osada, Hirokatsu Kataoka, Tsubasa Takahashi

 

LINEではAI技術を活用した新たなサービスの創出を進めるとともに、AI技術そのものの研究開発活動にも注力しています。コンピュータービジョン分野では、2021年に同分野におけるトップカンファレンス「ICCV 2021」に2本の論文が採択*1されました。さらに、2022年には人工知能分野におけるトップカンファレンス 「AAAI-23」にも論文が採択*2されるなど、着実な実績を納めています。また、2023年に大阪大学との共同研究講座である「LINE Virtual Human 共同研究講座」を開設*3をするなど、オープンな枠組みで研究開発を推進しています。

 

*1 2021年7月28日発表プレスリリース:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2021/3843
*2 2022年12月20日発表プレスリリース:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2022/4452
*3 2023年4月25日発表プレスリリース:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2023/4554

LINEは、今後もAI技術に関連した基礎研究を積極的に推進することで、既存サービスの品質向上や、新たな機能・サービスの創出に努めてまいります。