捜査機関による情報の開示請求
2017.10.11
LINEは親しい人同士のコミュニケーションを簡単に楽しく、安心そして安全に行うためのコミュニケーションアプリです。その性質上、ユーザーのプライバシーは厳格に保護される必要があり、原則として本人の同意がない限り当社は第三者にユーザーの情報を提供することはありませんし、サービス提供に必要な範囲を超えた目的で取り扱うこともありません。また、外部からそのような要請があった場合も協力することはありませんし、意図しないプライバシー侵害を防止するためのあらゆるセキュリティ対策も施しています。国家機関による盗聴や検閲等、ユーザーの人権を不当に脅かす行為に協力することも一切ありません。
ただし、例外として捜査機関による犯罪捜査への協力があります。捜査機関から情報開示の要請を受領した場合、関係法令に基づいて開示することが適切と判断される状況と範囲に限り、当社では捜査に必要な情報を提供する場合があります。
■当社の捜査協力に対するスタンス
当社の捜査協力に対するスタンスは以下のとおりです。
捜査協力とは何か
捜査協力とは、犯罪が発生した場合の事件解決や身体・人命保護のため、被疑者または被害者のLINE登録情報や利用情報を、警察等の捜査機関に対してLINEから提出することを指します。不特定のユーザーの情報を提出することではありません。
なぜ、捜査協力をするのか
LINEを利用した詐欺、殺人、暴行等の刑法犯罪に対し、被疑者の検挙や被害軽減、犯罪抑止につなげるためです。
当社は、LINEユーザーにとって、より安心安全な環境を提供することがLINEというインフラ提供者の責務の一つと考えており、後述のとおり法令の範囲内、かつ会社内の厳格な基準を満たしたケースにおいてのみ、捜査協力を実施する場合があります。
どのような法律に基づくのか
LINEを構成する主要なサーバは日本国内にあり、LINEは日本法に準拠して運用されています。
日本法においては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、捜索・差押えをすることができ、事業者がその命令に従う義務が生じます(刑事訴訟法218条1項)。また、捜査機関は、捜査については、必要な事項の報告を求めることができると規定されています(刑事訴訟法197条2項)。これらは、当社のみならず、日本の他事業者においても同様に適用されます。
どのようなプロセスで行われるのか
当社は、捜査機関等からの要請を受領後、社内のプライバシー保護組織(法律、セキュリティ、政策)において内容を徹底的に審議し、適法性、ユーザー保護の観点等からの適切性の検証を行います。本検証において、法的な不備がある場合はその時点で請求を拒否します。捜査目的に対して請求範囲が広すぎる場合などは捜査機関に対し、説明を求め、説明が妥当ではない場合はその請求に対応することはありません。また、対象のユーザー情報が保管期間を経過し、すでに廃棄している場合にはその旨回答を行います。
検証の結果、適法性、適切性等の確認が取れた場合のみ、担当者が厳格な取り扱いルールに基づき捜査機関への対応を行います。捜査機関への情報提供は社内で定める厳格なプロセスに則ってのみ行われます。当社が策定したユーザーのプライバシー保護政策に反して捜査機関に盗聴やバックドアの設置を認めることはありません。また、犯罪を構成しない段階における抽象的な危険性を理由とする国家安全保障(公安・テロ対策)上の要請や検閲等、LINEを利用した犯罪を原因としない要請に対して当社が応じることはありません。
プロセスの例外はあるのか
当社は原則として、上記のプロセスを経ていない場合には、捜査機関への情報提出は実施しません。ただし、以下は例外です。
・自殺予告や誘拐等の人命の保護のため、緊急的に対応が必要なケースの場合(刑法37条1項)
このような場合においても、LINEはプライバシー保護組織において適法性、適切性の検証を行い、確認が取れた場合のみ同様の取り扱いルールで対応を行います。
・日本国外の国家からの要請の場合
海外からの要請の場合は「国際捜査共助等に関する法律」や、特定国家との刑事共助条約(MLAT)等、国際捜査協力の枠組み等に基づき対応を実施します。これには、国際刑事警察機構(ICPO)を経由して日本の警察が要請を受領するケースや、大使館を通じて日本の外務省が要請を受領するケース等が含まれます。この場合においても、令状の受領やプライバシー保護組織による検証等、同様の取り扱いルールが適用されます。
どのような情報を提供しているのか
対象事案の捜査や裁判に必要となる情報に厳格に限定して提供します。目的に対して捜査機関の請求範囲が広すぎると社内審査プロセスで判断した場合には、捜査機関へ追加説明を求め、場合によっては請求拒否します。事案に関係のない不特定ユーザーの情報を提出することはありません。開示内容には一般に当社で保有する以下情報が含まれます。
・ 特定のユーザーの登録情報(プロフィール画像、表示名、メールアドレス、電話番号、LINE ID、登録日時等)
・ 特定のユーザーの通信情報(送信日時、送信元IPアドレス)
・ 特定のユーザーの最大7日分のテキストチャット*
*エンドツーエンド暗号化が適用されていない場合に限られます。2016年7月1日よりデフォルトでエンドツーエンド暗号化が有効化されています。詳細はこちらをご覧ください。
*裁判所が発行した有効な令状を受領した場合に限ります。
*動画/写真/ファイル/位置情報/音声通話の内容等は開示されません。
なお、サービスの運営に必要となる一時的な保存期間を経過後に請求を受領した場合には、当社で情報が既に削除されているため情報は提供されません。
捜査機関への開示にあたりユーザーに通知するのか
適用される法律や命令で禁止されておらず、通知が適切と当社が判断した場合(例:被害の拡散等に繋がらない)に通知します。
具体的にどのような要請を受けているのか
1.要請内容
例えばLINE上で被害者を特定の場所まで誘い出し殺害したというような事件につき、捜査機関から令状の提示を受けて、被害者と被疑者とのLINE上での通信履歴の開示を求められた場合、開示をする運用をしております。
2.要請内容
例えば常習窃盗の疑いのある被疑者につき、捜査機関から令状の提示を受けて、過去6か月分の被疑者の通信履歴の開示を求められた場合、調査対象期間が長すぎることを理由に拒否しております。
3.要請内容
例えば自殺志願者がネット上の知人にLINEで「これから○○に行って電車に飛び込んで死ぬつもりだ」というメッセージを送信し、その後音信不通になったというような事件につき、当該知人から相談を受けた捜査機関がLINEの通信に使用されたIPアドレスや、当該自殺志願者の登録者情報の開示を当社に請求した場合、当社は、自殺の日時・場所・方法等や捜査機関から聴取したその他の具体的な状況を踏まえ危難が差し迫っているか(緊急性)、また、当社が情報提供しなければ事件の解決は不可能であるか(補充性)、救うべき法益が侵害されるプライバシー等の法益よりも同等あるいはそれ以上の価値のあるものであるか(法益の権衡)、という緊急避難(刑法37条1項)の要件を検討し、該当する場合に情報を開示しております。
その他、主に以下のような事案にあたり、捜査機関等に協力する場合があります。
・人身被害(殺人、傷害等)
・金銭被害(詐欺、脅迫等)
・児童被害(児童買春、児童ポルノ等)
・違法取引(薬物売買、銀行口座売買等)
・事件予告(自殺予告、殺人予告、爆破予告等)
■LINE Transparency Report
LINEでは、捜査機関から受領した情報開示請求について、LINE Transparency Reportとして公開しています。
LINEを使った刑法犯罪の被疑者の検挙や被害の軽減、人命保護、犯罪抑止に協力するのは、LINEというコミュニケーションインフラを提供する上での責務だと当社は考えています。一方、昨今海外で話題になったように、捜査機関からインターネットサービス事業者への過度な情報提供要求は、サービス利用者のプライバシーを脅かす可能性を孕んでいます。LINEユーザーのプライバシーを厳格に保護し、一方でLINEサービス提供者としての社会的な責任を果たす上で、当社がどの程度の頻度で捜査機関から要請を受領し、応じているかを開示することが必要不可欠だと考えます。
LINEユーザーにこれからも安心してご利用いただけるよう、このレポートは今後も定期的に更新していく予定です。
レポート:https://linecorp.com/ja/security/transparency/top
当社では、今後もユーザー情報の取り扱いについて、透明性を高めるための取り組みを進めてまいります。