捜査機関への対応
2022.01.19
LINEグループ(以下「当社」)は、コミュニケーションアプリ「LINE」をはじめとする、生活に根付いたサービスを提供しており、その過程においてユーザーのプライバシーに関わる様々なデータを取り扱っております。
特にコミュニケーションアプリ「LINE」は、親しい人同士のコミュニケーションを簡単に楽しく、安心そして安全に行うためのアプリです。その性質上、ユーザーのプライバシーは厳格に保護される必要があり、原則として本人の同意がない限り当社は第三者にユーザーの情報を提供することはありませんし、サービス提供に必要な範囲を超えた目的で取り扱うこともありません。また、外部からそのような要請があった場合も対応することはありませんし、意図しないプライバシー侵害を防止するためのあらゆるセキュリティ対策も施しています。国家機関による盗聴や検閲等、ユーザーの人権を不当に脅かす行為に対応することも一切ありません。これは、「LINE」に限らず当社が提供するサービスに共通する考え方となります。
ただし、例外として捜査機関による捜査への対応などのケースがあります。捜査機関から情報開示の要請を受領した場合など、関係法令に基づいて開示することが適切と判断される状況と範囲に限り、当社では捜査に必要な情報を提供する場合があります。
■当社の捜査機関への対応に関するスタンス
当社の捜査機関への対応に関するスタンスは以下のとおりです。
どのような法律に基づきどのような場合に捜査機関に対して情報を開示することがあるのか
「LINE」は日本法に準拠して運用されています。
日本法においては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、捜索・差押えをすることができ、事業者がその命令に従う義務が生じます(刑事訴訟法218条1項)。
また、捜査機関は、捜査については、捜査関係事項照会等に基づき、必要な事項の報告を求めることができます(刑事訴訟法197条2項)。
さらに、緊急避難(刑法37条1項)として、たとえば自殺予告や誘拐等の人命の保護の必要がある場合など、人の生命、身体等に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずに情報を開示することが適切と判断される状況となることがあります。
このように、①捜索差押令状がある場合、②(日本における捜査関係事項照会等の)法的根拠に基づく捜査協力の要請があった場合、③緊急避難が成立すると判断した場合に限り、適切と判断される範囲で、当社は捜査機関への対応を行う場合があります。
これらの法律は、当社のみならず、日本の他事業者においても同様に適用されます。
捜査機関への対応とは何か
当社による捜査機関への対応の際は、上記の①〜③の場合に限り、犯罪が発生したときの事件解決や人命・身体・財産保護のため、被疑者・被害者など関係者のサービスの登録情報や利用情報を、警察等の捜査機関に対して当社から提出します。捜査機関への対応の際に、不特定のユーザーの情報を提出することはありません。
なぜ、捜査機関への対応をするのか
当社サービスを利用した詐欺、殺人、暴行等の刑法犯罪に対し、被疑者の検挙や被害軽減、犯罪抑止につなげ、人命・身体・財産を保護するためです。
当社は、ユーザーにとって、より安心安全な環境を提供することがサービス提供者の責務の一つと考えており、後述のとおり法令の範囲内、かつ会社内の厳格な基準を満たしたケースにおいてのみ、捜査機関への対応を実施する場合があります。
日本国外の国家からの要請の場合
「国際捜査共助等に関する法律」や、特定国家との刑事共助条約(MLAT)等、国際捜査協力の枠組み等に基づき海外からの要請を受けることがあります。これには、国際刑事警察機構(ICPO)を経由して日本の警察が要請を受領するケースや、大使館を通じて日本の外務省が要請を受領するケース等が含まれます。この場合においても、令状の受領やプライバシー保護組織による検証等、同様の取り扱いルールが適用されます。
どのようなプロセスで行われるのか
当社は、捜査機関等からの要請を受領した後、あるいは緊急避難が成立し得る事態を認識した後、直ちに当社プライバシー保護組織(法律、セキュリティ、政策)において内容を徹底的に審議し、適法性、ユーザー保護の観点等からの適切性の検証を行います。捜査機関からの要請があった場合の検証において、法的な不備がある場合はその時点で要請を拒否します。捜査目的に対して要請範囲が広すぎる場合などは捜査機関に対し、説明を求め、説明が妥当ではない場合はその要請に対応することはありません。また、対象のユーザー情報が保管期間を経過し、すでに廃棄している場合にはその旨回答を行います。
検証の結果、適法性、適切性等の確認が取れた場合のみ、担当者が厳格な取り扱いルールに基づき捜査機関への対応を行います。捜査機関への情報提供は社内で定める厳格なプロセスに則ってのみ行われます。当社が策定したユーザーのプライバシー保護政策に反して捜査機関に盗聴やバックドアの設置を認めることはありません。また、犯罪を構成しない段階における抽象的な危険性を理由とする国家安全保障(公安・テロ対策)上の要請や検閲等、当社サービスを利用した犯罪を原因としない要請に対して当社が応じることはありません。
どのような情報を提供しているのか
対象事案の捜査や裁判に必要となる情報に厳格に限定して提供します。目的に対して令状等に基づく捜査機関の要請範囲が広すぎると社内審査プロセスで判断した場合には、捜査機関へ追加説明を求め、合理的な理由が認められない限り要請を拒否します。事案に関係のない不特定ユーザーの情報を提出することはありません。捜査機関から指定のあったアカウントについて、当社から以下のような情報を提出します:
【LINEの場合】
・ アカウントの登録情報(プロフィール画像、表示名、メールアドレス、電話番号、LINE ID、登録日時等)
・ 特定のユーザーの通信履歴(送信日時、送信元IPアドレス、送信元ポート番号等)*
*捜査関係事項照会により開示することはありません。
・ 特定のユーザーのテキストチャット**
**エンドツーエンド暗号化が適用されていない場合に限られます(エンドツーエンド暗号化が適用されている場合は、当社においても(暗号化されていない)テキストチャットの内容を復号/抽出でき保有していないため、テキストチャットの内容の開示は行っておりません)。2016年7月1日よりデフォルトでエンドツーエンド暗号化が有効化されています。詳細はデータセキュリティをご覧ください。
**エンドツーエンド暗号化が適用されていない場合においても、開示範囲は最大7日分に原則限定されます。
**裁判所が発行した有効な令状を受領した場合に限ります。
**動画/写真/ファイル/位置情報/音声通話の内容等は開示されません。
【LINE Payの場合】
・ アカウントの登録情報(氏名、住所、メールアドレス、電話番号、銀行口座情報、登録/解約日時等)
・ アカウントの利用明細(入出金履歴 、送金履歴 、決済履歴 、両替履歴等)
・ アカウントの本人確認情報
・ LINE Payカード申請時の情報(受取人氏名 、配送先住所 、申請日等)
【その他サービスの場合】
その他のサービスでは、一般に以下のような情報が開示されます:
・ 当該サービスで作成したアカウントの登録情報
・ 当該サービスの利用履歴
なお、サービスの運営に必要となる一時的な保存期間を経過後に要請を受領した場合には、当社で情報が既に削除されているため情報は提供されません。
捜査機関への開示にあたりユーザーに通知するのか
適用される法律により禁止されている場合や、事案を鑑みて通知が適切でない場合(例:犯罪や自殺などの予告)、その他合理的に通知が不適切と判断できる場合を除き、当社はユーザーに通知します。
具体的にどのような要請を受けているのか
主に以下のような事案にあたり、捜査機関等からの要請に対応する場合があります。
・ 人身被害(殺人、傷害等)
・ 金銭被害(詐欺、脅迫等)
・ 児童被害(児童買春、児童ポルノ等)
・ 違法取引(薬物売買、銀行口座売買、マネーロンダリング等)
・ 事件予告(自殺予告、殺人予告、爆破予告等)
1.要請内容
例えばLINE上で被害者を特定の場所まで誘い出し殺害したというような事件につき、捜査機関から令状の提示を受けて、被害者と被疑者とのLINE上での通信履歴の開示を求められた場合、開示をする運用をしております。
2.要請内容
例えば常習窃盗の疑いのある被疑者につき、捜査機関から令状の提示を受けて、過去6か月分の被疑者の通信履歴の開示を求められた場合、調査対象期間が長すぎることを理由に拒否しております。
3.要請内容
例えば自殺志願者がネット上の知人にLINEで「これから○○に行って電車に飛び込んで死ぬつもりだ」というメッセージを送信し、その後音信不通になったというような事件につき、当該知人から相談を受けた捜査機関がLINEの通信に使用されたIPアドレスや当該自殺志願者の登録者情報の開示を当社に要請した場合、当社は、自殺の日時・場所・方法等や捜査機関から聴取したその他の具体的な状況を踏まえ危難が差し迫っているか(緊急性)、また、当社が情報提供しなければ事件の解決は不可能であるか(補充性)、救うべき法益が侵害されるプライバシー等の法益よりも同等あるいはそれ以上の価値のあるものであるか(法益の権衡)、という緊急避難(刑法37条1項)の要件を検討し、該当する場合に情報を開示しております。なお、当社がタイムラインやOpenChatのモニタリングやユーザーからの届出等 においてこのような自傷行為や犯罪の予告を発見した場合には、これらの要件に鑑みて当社が捜査機関に通報する場合もあります。
4. 金融の事例
例えば①LINE Payを利用したマネーロンダリングの疑いがある事件や、②LINE Payの友だち間送金機能を利用して商品の売買代金の決済をしたが商品が送付されてこないという事件、③被害者の銀行口座を被疑者作成のLINE Payのアカウントに連携させて被害者の銀行口座から不正にLINE Payアカウントに入金させた事件につき、捜査機関から捜査関係事項照会の提示を受けて、被疑者の登録情報や、3ヶ月間の利用明細の開示を求められた場合、開示をする運用をしております。ただし、利用明細の開示期間は合理的な範囲に限り、3ヶ月を超える期間の開示要請があっても原則としてこれを拒否しています。また、利用明細において被疑者以外の個人情報は記載しておらず、送金相手がマネーロンダリングの関係者であることが想定される場合においても、送金相手の情報の開示については、当該送金相手の情報開示を要請する捜査関係事項照会がない限り開示を拒否しています。
5. 金融の事例
例えば被害者から詐取した金銭と推測される金銭をLINE Payに入金した、あるいはこれを用いてLINE証券で株式を購入した事件について、捜査機関から捜査関係事項照会の提示を受けて、LINE PayやLINE証券における被疑者の登録情報等の開示を求められたとしても、LINE PayやLINE証券のユーザーの財産に不利益を与える場合や、これらを主たる手段として犯罪に利用された場合に該当しないことから、開示を拒否しております。これらの場合においても、裁判所から発行される令状の提示を受けた場合には、開示に応じております。
■LINE Transparency Report
当社では、捜査機関から受領した情報開示の要請について、LINE Transparency Reportとして公開しています。
当社サービスを使った刑法犯罪の被疑者の検挙や被害の軽減、人命保護、犯罪抑止に対応するのは、多くの利用者を抱えるインターネットサービスを提供する上での責務だと当社は考えています。一方、従前から話題になっているように、捜査機関からインターネットサービス事業者等への過度な情報提供要求は、サービス利用者のプライバシーを脅かす可能性を孕んでいます。
LINEユーザーのプライバシーを厳格に保護し、一方でLINEサービス提供者としての社会的な責任を果たす上で、当社がどの程度の頻度で捜査機関から要請を受領し、応じているかを開示することが必要不可欠だと考えます。
LINEユーザーにこれからも安心してご利用いただけるよう、このレポートは今後も定期的に更新していく予定です。
レポート:https://linecorp.com/ja/security/transparency/top
当社では、今後もユーザー情報の取り扱いについて、透明性を高めるための取り組みを進めてまいります。