防災・減災

東日本大震災をきっかけに、大事なときの“ホットライン”として使えるようにという想いを込めて誕生した「LINE」。ユーザーの皆さまにはご自身や大切な人を守るために、行政機関には災害対応や被災者支援のために、LINEを活用いただき、災害に負けない強靭で持続可能な社会の実現を目指しています。

緊急時に役立つ機能の実装

LINEの基本的な機能は、緊急時にも役立てていただけます。「既読」マークは、相手がすぐに返信できなくてもメッセージを読んだことがわかるため、相手の状況を確認する上での安心材料となります。また、トーク画面から選択できる「位置情報」は、住所と地図を送ることができる機能で、自分が被災している場所や家族との集合場所などを知らせることができます。その他、緊急時に役立つLINEの活用方法は、こちらからご覧いただけます。

緊急時に役立つLINEの使い方
緊急時に役立つLINEの使い方

平常時の備え、非常時の避難行動の支援

福岡市のLINE公式アカウントでは、平常時には現在の警報・注意報や近隣の避難所情報、ハザードマップなど防災情報の受け取りが、災害発生時には自身の位置情報にあわせた避難行動の案内の受け取りや、避難可能な避難所の確認をすることが可能です。また、復旧支援時には道路陥没などまちの不具合の通報を行うこともできます。

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災害対応における情報伝達手段としての活用

LINEの活用

2016年の熊本地震発生時、熊本市職員が自らのスマートフォンでLINEを利用して連絡をとりあい、災害対応活動をされていました。これをきっかけに、熊本市では災害時における職員間の安否確認や情報共有ツールとしてのLINEの活用が検討されています。LINEと熊本市による協定のもと、防災訓練を実施し、その効果検証を行った報告書も発表しています。

報告書の詳細
LINEの活用1LINEの活用2
市職員によるLINEでの情報共有
熊本市でのLINEを活用した防災訓練の様子

LINEのOpenChat機能の活用

2020年1月に鹿児島市が実施した「第50回桜島火山爆発総合防災訓練」では、LINEのOpenChat機能が活用されました。公共機関とLINEが公式にOpenChatを活用した事例としては初めての試みで、LINEのID交換(友だち登録)をしなくともトークルームに参加できる特性が、大規模な組織間の合同利用を容易にしたこと、個人のLINEとは独立したプロフィール(所属や肩書き)を設定できるため、誰が何を話しているかが一目瞭然となり組織間の連携がスムーズになったこと、後から参加した方でもトークルームの情報を時系列順に確認できたことなど、災害時におけるOpenChatの有用性を確認することが出来ました。

訓練の詳細

コミュニケーション×AIによる情報収集・提供

災害発生時に即座に被害状況を把握することは非常に困難で、発災直後にはどうしても既存の情報連携システム(119、防災無線、電話FAX等含む)だけでは情報空白の時間・場所が生じてしまい、災害対策や避難誘導等の遅れに繋がってしまいます。
そこで、SNSとAIを活用して効果的な情報収集を行うべく、国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、NIED)、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICT)、株式会社ウェザーニューズ(以下、WNI)とLINEは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)にて、防災チャットボットSOCDA*を開発しています。

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SOCDAでは、LINEから被災地域にいると推定されるLINEユーザーに対して「大丈夫ですか?」と問い合わせを送り、それに対してユーザーが「無事です」、「事故が起きています」、「怪我をしています」などのテキストや、位置情報、現地で撮影した写真などを送ることによって、短時間で詳細な情報を収集することができます。この際、例えば「事故が起きています」という回答者に対し、AIチャットボットを通じて、より詳しい状況(火事なのか、建物の倒壊なのかなど)を聞くことで、情報の精度を高めることも可能です。

SOCDAのLINE

収集した情報をマッピングすることで、情報空白地域も明らかになります。各地にいるユーザーから災害情報をリアルタイムで共有化してもらい、早期に災害の全体像を把握することで、自治体の災害対策本部などにおける迅速・的確な判断を支援します。

マップ
出典: 2020年1月17日に実施した神戸市における
SIPチャットボットの実証実験結果より
情報の集約・マッピングはNICT「D-SUMM / DISAANA」を利用

また、このシステムは情報を提供することも可能です。
被災者からの問い合わせを受け、必要な情報をAIチャットボットにより自動回答することで、行政への問い合わせを削減し、行政の力を被災者救助、復旧作業へと利用することが可能になります。

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SOCDAは、NIEDが開発する「基盤的防災情報共有ネットワーク(SIP4D)*」の組織同士がつながる情報共有・統合技術と連携させることで、災害状況を迅速に把握・伝達し、効果的な災害対応を支援する仕組みとなることを目指しています。また、NICTが開発する「対災害SNS情報分析システム(DISAANA)*」や「災害状況要約システム(D-SUMM)*」とも連携させ、X(旧Twitter) などのSNSの情報も併せて活用することで、より正確かつ高度な仕組みとなることを目指しています。
2018年12月に神戸市で初めて実証実験を実施し、それ以降各地の自治体に協力いただき、実用化に向けて実証実験を重ねています。

被災者支援チャットボット

2019年秋の台風15号、19号襲来の際には、SOCDAの情報提供の部分の機能に特化した、被災者支援のためのAIチャットボットを開発し、被害の大きかったエリア(千葉県、長野県、福島県など)において提供しました。
この目的のために新たに開設したLINEのアカウントを通して、被災者が入力した問合せに対し、AIが会話形式で応答することで、物資確保や被害認定、罹災証明など、被災された方の災害復旧・生活再建等に必要な情報を、場所・時間を問わず、いつでも提供することを可能にしました。

被災者支援チャットボット
情報提供のためのAIチャットボットを実装した
LINE公式アカウント

*SOCDA
「対話型災害情報流通基盤」。通称 SOCDA。国民一人ひとりの避難と災害対応機関の意思決定を支援するチャットボット。NIED、NICT、WNIが、LINEの協力を得て、研究開発を実施している。内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」のテーマⅠ「避難・緊急活動支援統合システムの研究開発」(研究責任者:NIED 臼田裕一郎)のサブテーマ1-3「対話型災害情報流通基盤の研究開発」に位置づくもの。
*基盤的防災情報共有ネットワーク(SIP4D)
災害対応に必要とされる情報を多様な情報源から収集し、利用しやすい形式に変換して迅速に配信する機能を備えた、組織を越えた防災情報の相互流通を担う基盤的ネットワークシステム。
*対災害SNS情報分析システム(DISAANA)
今現在のX(旧Twitter)への投稿をリアルタイムに分析し、指定したエリアの災害に関する問題・トラブルや、指定した災害種別の情報を抽出し、リスト形式または地図形式で表示することができるシステム。
*災害状況要約システム(D-SUMM)
人工知能を用いて、X(旧Twitter)に投稿された災害関連情報をリアルタイムに分析し、都道府県単位又は市区町村単位でエリアを指定すると、指定エリア内の被災報告を瞬時に要約し、そのエリアの被災状況の概要が一目でわかるように、わかりやすく提示するシステム。

LINEはこれらの取組みを通して、発災前~発災時~復興期まで一気通貫で、被災者と災害対応を担う行政の双方をサポートできる仕組みづくりを推進しています。

AI防災協議会

これら防災・減災の取組みをもとに、同様の志を持つ研究機関や企業、自治体、省庁等と議論を行い、SOCDAをはじめとしたSNSとAIを活用した取組の社会実装をするために、2019年6月に産官学連携の組織として「AI防災協議会」を立ち上げました。参画各者それぞれが保有する強みを持ち寄り、組み合わせることで、新しいイノベーションを創出し、災害対応能力の高い社会構築を実現することを目指しています。詳細は、AI防災協議会のホームページでご覧いただけます。

AI防災協議会