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太田 美希 / モーショングラフィックデザイナー

自己紹介をお願いします
モーションデザイナーの太田美希です。Motion Graphic Designチームに所属しています。

私は、2019年にLINEに中途で入社しました。実は、モーションデザイナーの新卒採用をするのは今回が初めてでして、私は中途入社なのですが、私の経験を元に仕事内容を紹介できればと思います。

私は高校までは韓国に住んでいて、韓国のモーションデザインスクールに通っていた時期もあり、韓国と日本の両方にアイデンティティがあります。前職は日本の映像制作会社でして、映像制作会社のモーションデザイナーは、転職するとしても同じような制作会社か、フリーランスという歩みが一般的です。つまり、どちらも受注する立場であることが多いんですね。でも私は、LINEにインハウスデザイナーとして転職しました。それは、依頼通りに作るだけでなく、「何を作るか」を企画から考える経験をすることで、プロジェクトの全体像を見据えたものづくりができるのではと思ったからです。

働く環境や会社としてのLINEには、かねてから魅力を感じていていました。ちょうどモーションデザイナーの求人もあったので、LINEだけを対象に転職活動を進め、ご縁があって今に至ります。現在は3Dモーショングラフィックを専門として、LINEの事業やサービスに関する様々な映像を制作しています。
業務内容や具体的な流れを教えてください
モーショングラフィックとは、グラフィックデザインに動きをつける手法のことです。モーションデザイナーはデザインを動かすことがメインの仕事になります。詳しい説明やLINEのモーショングラフィックについて説明したnoteもあるので、ぜひ参考にしてください。

モーショングラフィックを通じて、ブランドとサービスの理解促進に貢献するのが、私の所属するMotion Graphic Designチームの役割です。ブランドコンセプト映像やイベント映像、そしてサービスに関連する広告映像など、LINEから発信する様々な映像制作を担当します。それぞれの強みを生かしながら、プロジェクトの企画から実制作までをチームで連携して行うことが特徴です。

業務は、各事業部などの担当者からの相談で始まります。まずは事業部の担当者と制作内容についてのミーティングを行い、目的や内容、スケジュールなどをヒアリングします。次に、制作スケジュールを作成します。制作はチームで連携して行うので、各パートに必要なチームメンバーをアサインして、皆が効率良く動けるよう考えながらスケジュールを作っていきます。

私も他のメンバーもディレクターとしてプロジェクト全体をリードするときもあれば、3Dグラフィックの制作だけなど、部分的なパートの制作を担うこともあります。プロジェクトの性質や状況に合わせて、それぞれが適切な役割を担えるように皆で分担していきます。「何をどう作るか」という制作プランニングも、ヒアリングした内容をもとにチームメンバーで話し合いながら行います。ブレインストーミングを重ねてアイデア出しをした上で、表現のコンセプトと映像の展開を考えていきます。

そうして決まったコンセプトに基づいて、デザイン制作とモーション制作を進めます。実写撮影を行う映像チームもあるのですが、Motion Graphic Designチームの場合はほとんどがPC作業だけで制作が完結します。映像が出来上がったら納品前のプレビューを複数回行い、チームメンバーとフィードバックを出し合いながらクオリティをさらに向上させていきます。最後に完成した映像を納品して、公開された映像を確認したところでプロジェクトは完了となります。次のプロジェクトでモーションのクオリティとチームのパフォーマンスをさらに向上させるために、納品後にチーム内で制作の感想や今後の改善点について話し合う時間も持つようにしていますね。
仕事を進める上で、意識していることはありますか
最もプライオリティが高いのは「LINEらしさを表現すること」です。LINEのデザイナーとして、「LINEらしさ」を伝えるデザインやモーションを心がけています。そのためにも、LINEがどんな企業であるかということはもちろん、それぞれの事業やサービスがユーザーに何を伝えたいのかを正確に把握するようにしています。LINEは社内向けのクリエイティブにも力を入れているので、インナーブランディングとユーザーを含む社外へのアウターブランディングの両面で、最善の形で伝わるクリエイティブを目指しています。

2つ目は、LINEのブランドを守りながらも新たな映像表現に挑むことです。これは1つ目と矛盾するものではないんです。 LINEには、映像デザインに関するコーポレートガイドラインが定められています。それ以外にも、イベントに関する映像制作でもイベントのトーン&マナーを統一するガイドラインが存在します。私たちデザイナーは、それらのガイドラインを守ることを前提としながらも、新たな表現の可能性を模索するチャレンジを試みています。

モーションデザインを含む映像チームは、世界で発信される最新の映像表現に常にアンテナを張り続けて「LINEらしさ」を保った上で、新たな可能性を拓くクリエイティブを世の中に示すことを目指しています。新しさを目指して「LINEらしさ」から離れてしまっては本末転倒なので、そのバランスを調整することもデザイナーの腕の見せ所です。そのためにも、部署内で客観的なレビューを複数回行い、検証しながら制作を進めていきます。LINEは組織として日々進化し続けているので、常にLINEの今や少し先を見据えた映像表現を試みていくことで、LINEらしくも新しい映像表現が目指していけるのではと考えています。

LINEが目指していることは、サービスを通じて新たなライフスタイルを提案し、人々に「WOW」な体験を提供することです。モーショングラフィックでもそのメッセージを体現することは自分自身の目標でもありますし、チーム全体の目標でもあります。

3つ目は、モーショングラフィックを好きであり続けることです。なぜわざわざ挙げるのかというと、クリエイティブ職の中でも比較的長い作業時間と集中力を必要とする職務だからです。新しいチャレンジをし続けるためにも、常に最新の映像テクノロジーに関心をもち、インプットし続ける必要があります。これは映像制作に限る話ではないかもしれませんが、仕事を心から愛して楽しまないと、精神的に疲れることが増えてしまうと思うんです。私自身も長くこの仕事を続けているとバーンアウトのようになることも正直あるのですが、そんな自分を克服して仕事へのモチベーションを失わないよう心掛けています。
おもしろいことや難しいことなど、働く中でこれまでに得た感触を教えてください
面白いのは、企画段階から取り組めること。与えられた目の前の課題を解決するだけでなく、デザイナーとしてブランディングという大きな課題を前提としながら、何をどう作るかという企画から考えられるのはとてもやりがいがあります。

冒頭でお話ししたこととも少し繋がりますが、一般的な映像制作会社では、デザインも映像も「何を作るか」が決まった状態で依頼が来ることが多く、お題どおりに作り上げることが求められます。でもLINEでは、ある程度の方向性が決まっていることもあるものの、実際に作るものをチームの皆で考えることができます。

ここには、インハウスデザイナーであることが大きく影響しています。そもそも、インハウスでモーショングラフィックデザインの専門チームがあること自体が珍しいです。一般的な企業では、専門的な制作業務は外注することが多いですが、インハウスデザイナーがいれば、内部で制作するにしても外部の協力会社に発注するにしても、ディテールまでこだわって作り込めるというメリットがあります。

LINEのデザイン組織、LINE CREATIVE CENTERは他の事業部の中に組み込まれているのではなく、独立的に存在しています。だからこそ、「それは本当にユーザーのためになりますか」「LINEらしいですか」というようなことを言えたり、言わなければならないという責任感をみんなが持っています。これは、モーショングラフィックに限らずデザイナーの全員に共通するスタンスですね。

これには、表裏一体の難しさもあります。LINEの組織規模はどんどん大きくなっていますが、精神はまだベンチャー企業に近いです。たとえば新しいサービスが始まってもユーザーの反応次第では短期間でクローズしてしまうこともあります。毎日のように新しい風が吹くんです。そういった激しい波の中で、言語や文化の違いがある多国籍の社員たちと共にプロジェクトに取り組んでいくのは、高いコミュニケーション能力が必要になります。チームとしても技術的なチャレンジに積極的に取り組みたいという姿勢があるので、どんな業務にも単純化できない複合的な難しさがありますね。

個人的な課題は、守りながらも新たなチャレンジをするという矛盾の両立です。繰り返しになってしまいますが、LINEらしいトーン&マナーを守ることは必須であるものの、だからといってデザイナーとしてつまらないことはしたくないです。「らしさ」の中で常に新しいクリエイティブに挑むのは、やっぱりとても難しくて。少しでもオーバーすると、LINEらしくなくなってしまいます。言葉で表すのは難しいんですが、ディテールの動きにすべて「LINEらしいか否か」の基準があるんですね。例えば、ゼリーが「ぶよん」と揺れるような動きはLINEらしくありません。そのようなチーム内で無意識的に共有されている感覚についても、体系化を試みています。ガイドラインをドキュメントとして作りながら「この動きはLINEらしいのか」をチームで話し合って、感覚の共有と言語化を進めているところです。
どんなことに自分の成長を実感しますか
「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、私はまさに「森を見れるようになった」と感じます。これは、お題どおりに作るだけのプロジェクトや、特定のカットを部分的に担当するだけでは得られなかった視点でした。企画段階から関わることで、制作のプロセス全体を最初から最後まで見渡す目が育っていく。言い換えれば、ディレクターの立場に必要となる能力が育ったようにも思います。

モーションのストーリーテリングの流れにも意識が向くようになりました。制作途中で、もし企画したコンセプトから外れていった場合でも、それに気付くことさえできれば、修正や調整を行うべきだと判断ができますよね。そうすれば、アウトプットが間違った道に行かなくなるんです。

こういった視点は、色々な立場での経験を重ねたことで身についたんだと思います。例えば私のチームでは、アサインが特定の役割に固定化されることはありません。私の担当も日々変わっていて、様々な立場を実際に経験することで、その立場特有の難しさや重視すべきことが見えてくるようになりました。今もまだ完璧ではないんですが、それでも日々少しずつ成長できていると感じます。特に最近は、インターン生に教える機会もあって、成長を実感する機会がますます増えました。教えることが自分にとっても勉強になって、全体を見る目がさらに鍛えられたように思います。
LINEのデザイナーに必要だと感じることは何ですか
やっぱり、コミュニケーション能力でしょうか。制作でもその他の業務でも、相手の意図を理解して必要なアクションに繋げられるかどうかは仕事の基本ですし、何事にも通じる重要な能力だと思います。LINEには多国籍なメンバーが働いていますが、仮に語学力が不足していたとしても、本質的な話を理解し合える場面がよくあります。語学力の問題ではない、総合的なコミュニケーション能力が仕事の核になるんだなと感じます。

先ほども言いましたが「本当に好きであること」が何よりも大切だと思います。私はこの仕事を始めて5、6年になりますが、周囲には辞めた人も多くて、本当に好きな人だけが続けています。技術は日進月歩で発展し続けていきますし、日々新たなインプットを行う必要があります。モーションの書き出しには時間がかかるので、業務の性質として必然的に仕事量も多くなってしまう。働く時間が長くなる日もあるので、続けていくには「本当に好き」という強いモチベーションが必要になります。それがあれば、スキルも必然的に身についてくるものだと思っています。

ギリギリまでクオリティを上げ続けるために、大きなプロジェクトの納品前は日付が変わるまで働くような日もありますが、頻度としては3ヶ月に1回程度で、普段はそれほど遅くなりません。クオリティを諦めれば定時で終わることもできるのですが、本当にモーションが好きで自分の仕事にこだわりのある人が集まっているので、そうはなっていないですね。皆、自分自身のスキルアップと、LINEが目指す高いクオリティの実現を目指して日々の業務に打ち込んでいます。
LINEに入社して良かったと感じることはなんですか
色々ありますが、グローバルに拠点があるために開放的でボーダーレスな文化があることは大きいですね。私が所属するチームのメンバーは、海外での業務経験があったり、アニメーション業界やテレビ業界などの経験があったりと、バックグラウンドが本当に多彩なんです。

正直なところを言えば、実は入社前にはインハウスデザイナーとしての仕事に不安がありました。「いつも同じような映像を作るだけになるんじゃないか」と心配していたんです。それまでは色々な企業の仕事をしていたので、一社だけの仕事に集中すると自分の引き出しが増えなくなるんじゃないかと不安にもなっていましたが、そんな心配は無用でした。LINEには本当にいろいろな仕事がありますし、受け身ではなく主体的な立場で映像制作に関われる。事業展開が幅広いだけでなく、新しいサービスも日々登場していき、イベントも社内外でたくさん開催されます。インハウスとは思えないほど、案件のバリエーションがとても豊富なんです。

また、組織としてデザインに強くなろうとする意欲も強く感じます。どんなプロジェクトでも各自が目標を持って取り組んでいて、その達成や成長のためにアサインされることも多いです。「今回は今までとやり方を少し変えて、レベルアップした完成度を目指してみよう」というような課題が常にあります。映像の書き出しに使用するソフトウェアを変えてクオリティを高めたり、XR(Extended Reality)などの最先端技術に挑戦したりとか。XRには個人的にも関心があったので、業務の中でそういったチャレンジの機会があるのはデザイナーにとって嬉しい環境だなと思います。
最後にメッセージを
モーショングラフィックは本当に難しいですが、その分やりがいもあり、とても面白い仕事だなと日々思います。チームミーティングで話していても、誰ひとりこの職業に携わったことを後悔していないんですよね。

LINEのモーションデザイナーの仕事は、映像クリエイティブを通じて、事業やサービスの情報を世の中へ発信することです。同じくモーショングラフィックデザインが好きな学生の皆さんと、気持ちを共にしていけたらと思います。